火の力を借りて登り窯で作品を創る!
陶芸と出会ったのは、萩の陶芸家大山博人氏が、友人だったことに始まる。
元々焼物が好きで、湯呑を集めたり、大皿を集めたり、折にふれて器の収集を楽しんでいた。
30代後半のある時、一つの物語があり、自分の骨壷を作りたいという思いに到った。
萩に行く度に、大山氏の工房でロクロに向かう日々を送り、いつしか、自宅に工房を準備するまでになった。が、電気窯やガス窯ではなく、本物の薪窯で焼成したいと、薪窯にこだわった。
その一つの理由は、先の大山氏が薪窯(登り窯)だったことと無関係ではない。そして、本物を志向したということでもある。
以来、春と秋の年に1〜2回の窯焚きが続いている。
自分だけの世界で一つの器。そして、土と火がもたらす自然のドラマは、武の世界に通ずる精神性と、無から有を生み出す喜びがある。土が炎の力を借りて、一つの器となる神秘は、人間が無から誕生し、社会の一員として存在し、そして、無の世界に帰って行くという目に見えぬ何物かの意思がもたらす、偶然ではない、必然の物語。つまり、形あるものは必ず壊れるという、無常という世界を思わずにはいられない。
表現の世界、つまり、芸術と呼ばれる世界は、妙に近寄り難い世界と思っていた。器をつくり、書をかき、歌をうたう。日常の何気ない世界が、生きる自己の糧となっていることに、近頃やっと気づかされた。
大上段に、かまえる必要はまったくなかったな…と。
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※写真提供 : 季刊誌旬遊